「写 真」は一期一会の宝もの P



夕 焼 け 見 な が ら

 和歌山県白浜には南紀白浜温泉のシンボルともなっている、中央にお月様のような円形の穴が開いた「円月島」があります。ここはまた、夕景の名所ともなっていて写真材料としても良く使われます(下の写真)。
 晴れた日の日没時には、この海蝕によって生じた「円月島」中央の穴に陽が落ちる瞬間を見ようと大勢の人が集まって来ます。
  私も一度はその様子を撮影して見たいと考えて「円月島」を200m位の距離から遠望できる場所を陣取って日没を待ちました。
 待つこと数十分、いよいよ太陽が沈む瞬間の到来です。しかし残念なことに、海面すれすれの部分に漂う薄い雲が邪魔をして、太陽と海面が見かけ上接触する現象が見えず満足の行く日没風景を撮ることは出来ませんでした。
 気持ちを切り替えて何か良い風景がないかと探しながらしばらく海岸沿いに歩いて見ました。すると私の前方を美しい夕焼けを見ながら歩いている二人連れが居ます。と同時に右手を走行中の車がやはり瞬時の美しさを眺めたくなったのでしょう。道の真ん中ですっと止まりました。

 普通なら車のような人工物は自然の風景にそぐわないので、視野の横から侵入してきた車を恨むところですが、何故かこの時は赤いテールライトの灯いた車の後ろ姿が美しい夕焼けや人物の後ろ姿と円月島に自然にとけ込んで違和感なく受け入れられるという不思議な経験をした数秒間でした。

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