「写 真」は一期一会の宝もの 28



金 色 の 中 を

 いつのことだったか、秋の始め、皇居近くのレストランで友人と食事をした際、少し時間があったので食事前にお堀端を散策しました。丁度その時、夕陽が射してきてお堀全体が見事な金色に染まりました。水面を滑るように行く白鳥、あたかも白鳥に変身した貴婦人のような感じがしました。

 皇居のお堀は13カ所あり、たくさんの橋が架かっていますが、ここは平川門の近くだったと記憶しています。白鳥の種類はくちばし上部に黒い小さなコブのあるコブハクチョウです。コブハクチョウは滅多に鳴かないのが特徴でMuteとも言われます。

 びわ湖を主とする近畿地方以北で冬季に見られるコハクチョウやオオハクチョウは遠くシベリアから暖かい日本で越冬するために飛来し、クェークェーと良く鳴く渡り鳥ですが、日本各地の公園や庭などで年中見ることのできる白鳥は殆どが日本に居着いて留鳥となっているこのコブハクチョウです。

 名前に似ず優雅で美しく、バレエ『白鳥の湖』や童話『みにくいアヒルの子』にも登場するコブハクチョウですが、抱卵中の巣に近づいた男性が殺された例もあるほど、強くたくましい面もあるそうです。

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