ケニア撮影一人旅 Jan. 2009  保事協ニュース1月号掲載記事に加筆したものです。
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 2008年夏、野生動物の王国ケニアへ写真を撮りに行ってきました。日程を患者さんの来院数が最も少なくなる、8/11〜8/18に合わせ、単独旅行の手配をしてくれるケニアサファリ専門の旅行会社、MAX SAFARIのホームページを見て、6泊8日サファリの申し込みを4月にしました。
 往復に丸2日費やすので実質ケニア滞在はわずか6日間、その間に4ヶ所の国立公園と国立保護区を廻り、8回ものゲームサファリ(1回5・6時間以上かけて広大なサバンナを動物を探し求めてサファリカーで走り回る)を楽しむという過酷なスケジュールです。一人旅と言っても実際は現地のドライバー兼ガイドが常時同行してくれます。
 関空発ナイロビ行きの直行便が無かったので、途中ドバイでの5時間余りのトランジット時間を朝6時からタクシーで成長著しい市内を一回りして時間つぶしをしました。高さ世界一で有名なブルジュ・ドバイは2008年12月には850m以上になるのだそうです。しかし結局何mになるかは高さ競走をしている他のビルとの兼ね合いで公表されていません。
 当時のドバイは今の金融恐慌が起こる直前の不動産バブル真っ最中。ブルジュ・ドバイ以外にも、大規模な地下鉄や高速道路建設、空からでないとその規模の大きさを知ることの出来ない巨大な椰子の葉の形をした総工費20兆円以上という人工島、パームアイランド。右上から2番目の写真はパームアイランドを空から見た完成予想写真です。近くのホテルに飾ってありました。
 一枚の椰子の葉に見える島一つに豪華ホテルやディズニーランドのような施設がいくつも出来るのだそうです。 他にも冷やすのに75日を要したという屋内人口スキー場、世界初の海中ホテル等々、世界中の建設用クレーンの30%がドバイに集まっていたということです。
 世界同時不況に陥っている今、あの「未来都市」ドバイはどうなっているのか気になります。バベルの塔のように崩れ去って消えて行くという人も居れば、2001年のアメリカ同時多発テロ以来アメリカを見限った中東のオイルマネー回帰が起こり、その結果2006年に今と同様なバブルを経験した後、不死鳥の如く生き返ったドバイにはまだまだ莫大なオイルマネーがあるので輝く未来があるのだという説とがあります。
 実際この原稿を書いている2009年2月現在、ブルジュ・ドバイより高いビル建設が同じドバイやクエート、サウジアラビアなどでも始まっているそうです。中には高さ1.6kmにもなるビルもあるとか。 8月12日10:05ドバイ発、14:15ナイロビ空港着、現地のガイドに迎えられてまず一安心、最初にナイロビ国立公園のジラフセンターで3時間ほど、怪我などをして保護され飼育されているキリンやイボイノシシなどを撮影してホテルへ入りました。ナイロビには他にもケニア各地から集められた動物の孤児が飼育されている施設がいくつもあります。
 ケニアでのホテルはパナフリックホテル、京都ホテルクラスですが、広い庭があって日本では植物園でしか見られないような樹木や草花を沢山見ることができました。ケニアはどこも治安が大変悪いのでホテル敷地から外へは絶対に出ないようにとのことでしたが敷地内を見て回るだけで十分時間をつぶすことが出来ました。道路わきで、車のタイヤを指差し、何か問題が起きていると親切心を装い、停止した車を襲う強盗などが出没することもあるそうですのでレンタカーなどされる時は充分注意が必要です。
 途中初めてみるサバンナの光景やそこここで見られる動物や鳥の姿を楽しみながら約5時間かかって着いた広大なアンボセリ国立公園では、ドライブ中に象の群れが行進する姿に何度も出会いました。群れの中には必ず何頭かの子象が居ます。子象を全員で隠すようにして守りながら行進するのです。やんちゃで元気な子象は時々群れを放れて走って行きますが、直ぐに親象がやってきて引き戻される姿は何とも微笑ましい光景でした。
 ステファンの、道無き道で4駆を自在に操る技術と、動物や鳥を遠くから見付ける視力の良さには感心しました。ケニアは英語が母国語なので日常会話には不自由しません。いつでも私がSTOPと言えば止まってくれます。 お陰で沢山の野生動物の生態を思う存分見てカメラに収めることが出来ました。ゾウの他にもキリン、シマウマ、インパラ、ガゼル、ダチョウなどの草食動物がたくさん見られました。美しいサバンナの日暮れを撮影しつつ宿舎であるアンボセリソバロッジへ着きました。
 ところで、ロッジとホテルの違いは、ロッジが1家族毎に別々に立てられた宿舎に寝泊まりすること位で不自由することは何もありませんでしたが強いて不便を言うならば、シャワーだけでバスタブが無いことと、食堂へ行くのに少し歩かねばならなかったこと位でしょうか。以後計4泊はいずれもロッジを利用しました。料金は1泊2食付き200$前後だそうです。
 翌14日7:30、今度は北部のナクル湖国立公園へと向かいました。約8時間かけてのドライブですが、もちろん途中全ての路を含めて野生動物の王国ですから退屈することは全くありません。途中ナマンガとかいう町でステファンがランチボックスを買って来てくれたので車中でそれを食べました。レストランでゆっくり食事するなど時間が勿体ないので私が最初に、目的は動物や鳥を撮影すること、あとは周囲の風景と出来ればマサイ族の生活を撮りたいので他のことには時間を使わないで欲しいと言っておいたことをよく覚えていてくれたのです。
 ナクル湖は面積220ku、数千から多いときは数百万羽ものフラミンゴが巣作りをすることで知られています。フラミンゴ以外にもペリカン、アフリカハゲコウ、シロサイ、バッファロー、ガゼル、インパラ、ヒヒなどを見ることが出来ました。バッファローの背に乗っているウシツツキは、毛の中に居る虫を食べてくれます。
 密漁(角が漢方薬になる)のため絶滅寸前になり南ア共和国から移入された10数頭のシロサイの姿も見ることが出来たのですが、ここで見られる確率が高いと聞いていたヒョウにはお目にかかれなかったのが残念でした。
 ナクル湖はまた、開発と自然環境の共生という難かしいテーマに直面しています。ナクル湖の北側斜面に隣接するナクル市は、1962年の人口38.000人から観光地と化した今、約36万人に増え、周辺地域の環境の著しい悪化を招いています。日本はこのような環境問題に対処すべく1990年代から、ナクル市の上下水道の整備の援助を行なっています。しかし皮肉なことに、こうした都市インフラの整備が、かえって人口流入を招き、更なる環境悪化へ拍車をかける一因ともなっているのです。
 夜は鬱蒼と茂った密林の中に立つレイクナクルロッジで宿泊し、翌朝15日は朝食後、マサイマラ動物保護区へと向かいました。6時間以上もの間、再びシマウマ、ヌー、キリン、ゾウ、ライオンなどを眺めながらのドライブです。 ライオンは、やはりいかにもサバンナの王者と言った風格を感じます。 右の写真のように数人で一台のサファリカーを借りて廻る団体ツアーの方も居られます。
 ケニア全土で野生動物以外で目に付くのはやはり精悍な体格で独特の派手な衣装をまとい長い棒を持って歩いているマサイの人たちでした。 助手席から彼らを撮影していると、ステファンにマサイの人たちを撮ってはいけないと注意されました。たとえ車の窓からでも、そして遠くからでもです。彼らは写真を撮られるのを極端に嫌い、しかも視力6.0以上と言われる目で自分たちにカメラを向けている者を見付けると、あの豹のように速い足で追いかけ、素手でライオンを倒すという力で制裁を加えられるのだそうです。しかしマサイ族の中にも旅行者を歓迎してくれる部落もあるそうなのでまずそこへ行って見ることにしました。
 食塩を一切口にしないというマサイの人たちは健康で美しいしなやかな身体つきで、商売のためとは言えたいへん親切でマサイ独特のジャンピングダンスで歓迎し、家畜の糞と泥と雑草を塗り固めて作った家の中を案内し、今でも彼らが日常やっているやり方で火を作って見せてくれました。男性も女性も似たような派手な衣装をまとっているのでどうしても男性か女性かの区別がつかないこともありました。 ここで記念にライオンの牙を買いましたが、本物かどうかはDNA検査でもして見ない限り分かりません。
 その後も夕刻までゲームドライブを楽しみ、午後7時頃キーコロックロッジへ到着しました。ここはマサイマラでも歴史のある高級ロッジらしく 広大な敷地に池や小川や森林があってカバやワニの他たくさんの名も知れない鳥達が見られます。外部の国立保護区との間に柵が無いので野生動物たちが敷地内に入り込んで来ることもあります。それをガラス張りのラウンジから眺めることも出来る五つ星ホテルなのだそうです。夜は日本では見られなくなった蚊帳の中で休みました。
 翌16日、朝のゲームドライブを楽しんだ後、テレビでしか見たことのないヌーが大移動の際に見せる川渡りが、運が良ければ見られるかもしれないとステファンが言うので行って見ることにしました。そして幸運にもその川渡りを見ることが出来たのです。 ケニアへ来てから沢山の動物を見ましたが、その中でも圧巻だったのがこのヌーの川渡りの光景でした。アフリカに住む百万頭以上のヌーが数千頭ずつの群れに分かれて、ケニア周辺の南と北とで入れ替わる雨季に育つ草を求めて北へ、南へと1,500qも移動するのです。その途中でほぼケニア全土を横切って東西に流れているマラ川をどうしても渡らなければなりません。川渡りをしそうな地点を遠望出来る所で渡り始めるまでじっと待ちます。ヌーの大群が遠くに見えてはいるのですが、なかなか川を渡ろうとしません。川や対岸にはおなかを空かしたワニやハゲタカ、ライオン、時にはヒョウやチータ、ハイエナなどが待ち構えていることをよく知っているのです。 2時間程経った頃、無為に時間が経つのが惜しくなった私が、今日は川渡りは無いのじゃあないかとステファンに聞くと、それは「神のみぞ知る」とのことです。
 実際、2時間前に出会った九州から来られた方は諦めてどこかへ行ってしまわれました。待つこと4時間余り、私もそろそろ退散しようかと思い始めた頃、あとからあとから続いて来るヌーの群れに押し出される格好で突然ヌーが川渡りを始めました。直ぐにステファンが車を撮影に適した場所に着けてくれます。
 ヌーが集まる川岸は高台になっていて、そこから川へ出るには20m位の崖を降りなければならないのです。そこを体重数100sもあるヌーが次々に跳び降り、川へ飛び込み、幅数10mの川を押し合いへし合い泳いで渡るのです。2時間足らずでヌーの一つの集団がマラ川を渡り終えた頃、滅多に見られないと言われる光景を目の当たりにした感動に浸りながら再びケニアでの最後の宿泊地となるキーコロックロッジを目指し、美しいサバンナの夕陽を眺め、撮影しながら走りつづけました。    
 ヌーの川渡りはもちろん、ライオンや象の行進でさえ、ケニアへ行けば必ず見られるというものではないそうです。サファリ旅行は専門の業者に頼むのが良いとNETに書かれていたことを思い出しました。
 人類発祥の地アフリカは本当に素晴らしい所です。人間に壊されていく地球で自然がたくさん残っている数少ない場所の一つであり何度でも行きたくなる所です。旅行中日本人には二人しか出会いませんでしたが、ケニアの食事が日本人によく合う適度の味付けであったのは嬉しいことでした。日本の1.5倍の面積で赤道直下に位置しながらも、海抜1,700mにある夏のサバンナ気候はとても心地よいものでした。
 翌17日はケニア最後の日です。ナイロビまでの数時間も、これまでと同様動物や鳥の写真を撮りつづけました。昼食はケニアへ来た人の殆どが訪れるというナイロビの肉料理専門のレストラン、カーニバルへ連れて行かれました。ウシ、ワニ、ダチョウ、ラクダ、ブタ、シチメンチョウその他数え切れないほどの串刺しになった焼き肉がこれでもかこれでもかというほど出てきます。
 これまでずっとケニアの美味しい食事に安心しきっていた私はこの肉料理にはさすがに辟易しました。1時間余りもの間、食事そっちのけで周囲の写真を撮っていました。
 午後3時頃ステファンがナイロビ空港まで送ってくれました。ケニア滞在中一度も雨に降られることもなく事故にあうこともなく良い旅が続けられたことのお礼の気持ちのチップを渡して硬い握手をしました。
 また来年来いよ、その時は直接俺にメールすればもっと安くもっと良いところを案内するからとのことでした。17:15ナイロビ発、23:15ドバイ着、深夜でも、もの凄い人でごった返しているドバイ空港を18日2:35、往路と同じエミレーツ航空で飛び立ち関空に17:20無事帰ってきました。 撮影した3,000枚もの写真はまだ整理が完了していない状態です。
 それではこの長文を読んで下さった皆様 どうもお疲れ様でした。地球が駄目にならない内にまだの方は是非、皆様もアフリカを楽しんで来て下さい。 ジャンボ!(ジャンボとは、今日は、から、お休み、さようならまで使えるケニア滞在中何度も使った便利なスワヒリ語の挨拶です) ここまでに掲載出来なかった写真を何枚か置かせていただきました。右の走っているシカのような動物はガゼルと言ってウシ科の動物です。      
 最後にこの旅行中撮影したサバンナ風景の中で私が一番感動した美しい夕焼けの写真でお別れします。ハゲタカが二羽、悠然と休んでいる姿もご覧下さい。関空に帰ってきていつもと変わらす。真剣なまなざしで働いて居られる日本女性の姿を見てほっとした気分になりました。この方達のおかげで安心して旅行が出来るのですね。やっぱり日本はアフリカと違った意味でとてもいいところです。それではもう一度 ジャンボ!

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