水害の際に頂きましたご厚意に心から感謝申しあげます。 栗原 眞純

 2013年9月16日、小院は台風18号がもたらした大雨による水害で床上140cmの浸水を受け長期休診のやむなきに至りました。その節には先生方始め多くの方々が来て下さり、何か手伝うことはないかと皆様から仰っていただきました。また、伏見医師会醍醐班、伏見医師会、伏見医師協同組合、京都府医師会、京都府保険事業協同組合、京都府保険医協会その他の方々からたくさんのお見舞いを頂戴し本来ならお一人お一人にお礼状を書かねばならないのですが、事後処理のあまりの多さに大変失礼をしてしまい誠に申し訳なく思って居りました。

 今回、私どもの醍醐班が伏見医報会員コーナー執筆の順番になっているのを機会にこの場をお借りし、皆様にお礼申し上げると同時に、小生なりに把握している今回の人災事故の顛末を書かせて頂くことにしました。下の写真は水害当日撮影した当院の状況です。左回りに@受付、レセコンもカルテも失いました。A診察場のデスクです。B水没した車の上まで来た水位が良く分かります。CX-P機器も奥に見えているCDエコー機器もOUTです。D36年間働いた空調機は外観がそのままなのでかえって哀れです。医院再開は来年5月頃になると思います。

 さて、小院のある小栗栖地域は元来低地ではあったのですが、1964年天ヶ瀬ダムが完成し、その後山科川の護岸工事も着々と進行、併せて小栗栖地区に大雨が降った場合を想定して、小栗栖地区に貯まった水を毎秒数トンもの速さで山科川に押し戻すための巨大な排水ポンプ2機を有する鉄筋コンクリート3階建ての立派なポンプ場が設置されました。以来、この9月16日程度の雨は何度か経験しましたが、床上浸水はおろか床下浸水被害さえ無かったのが実情でした。

 京都新聞などによると、このポンプ場管理を京都市から委託されていた業者との間で、大雨が予想される場合は必ず二人体制でポンプ場に当直するという取り決めが成されていたにも拘わらず、当日は一人しか当直者が居らず、その当直者がポンプを動かすボタンを押し間違えるという初歩的なミスをしてしまったため、4時間もの間、ポンプが全く作動しなかったのだそうです。

 そのためポンプ操作のできる係員が慌ててかけつけた時には小栗栖地区の300戸足らずが最高200cmという泥水の浸水を4時間にわたって受けてしまい、小院はX線装置やエコー機器などの診療機器と理学療法治療機器、薬剤、カルテの殆ど全てを失い診療不能となってしまいました。

 ここでよく分からないのは何故ポンプが止まり、付近が水浸しになるのに気付かず4時間も何もしないで放置していたかということです。私はこの間当直者は、ボタンの押し間違いに気付かず眠っていたのだと内心考えて居ます(間違っていたらご免なさい)。

 今のところ京都市は比較的低姿勢で責任はほぼ100%市側の不手際によるものであることを認めているようですが、元通りの診療が出来るようにしてくれるという正式な確約は、2013年12月13日現在、未だ頂いていません。毎日の診療を支えてくれていた大切な宝である職員の方々への休診中の対応が愁眉の難問です。この文章がお目にとまるころには医院再開に向かって少しでも踏み出せて居れれば良いのだがと思っています。





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