楽しきかなテニス 勝てばなお楽し  京大医学部芝蘭会硬式庭球部40周年記念誌 July,1992

 小生現在花の55歳、40歳で開業し、運動不足を補うために1年間テニススクールに通いギャル達と一緒になって始めたのがテニスとの出会いです。ついで近くのテニスクラブに入会し、初めて出場したダブルストーナメントで優勝してからやみつきになりました。

 その後家内もやりだし、二人でとったカップ類は50個になろうとしています。 テニスはプレーするだけでも充分楽しいものですが、その上勝つことができれば楽しさは倍加します。そこで小生なりの、高年プレーヤーが勝つための条件・練習法などを少し書かせていただきます。   

                   

 テニスに勝つための3要素は、@技量(パワーとテクニック)、A精神力、B頭脳だと思います。この三つはそれぞれ3分の1ずつ同等に大切です。どの一つが少なくてもまずビッグゲームでの優勝は望めません。

@技量について
 高年者テニスの最も弱いのがこの中のパワーです。実際オープン(出場資格に制限のない)トーナメントに出場して負けるのはたいていパワーに圧倒され紛砕されてしまう場合です。パワーだけはどうにもならないというのが実感です。しかしテクニックを磨けばテニスクラブのアルバイトコーチ程度の相手ならなんとかなります。よくコントロールされたロブ、角度のあるボレー、意表をつくドロップショット(これにバックスピンがかかれば最高)などは通常のパワープレーヤーにも充分対抗できます。

A精神力について
 こんなものはパワーとか技術の前にはとるにたらないものだという方もおられますがそのようなことを言う者に限り、力の括抗した試合ではまず勝てないものです。非常に競ったゲームで、このポイントを落としたら負ける、あるいは逆にカップが手中に入る、そのような時に平常どおりのショットが打てるか打てないかはまさにその人の精神力にかかっています。

 精袖カを養うには勝ちゲームばかりやっていたのでは駄目です。また、ある程度テニスのできる者がいくらラリーやボレーの練習をしてもあまり効果がありません。練習は試合形式で、力の均衡した相手かまたは少し上の相手を選んでプレッシャーをかけられた状態でするべきです。プレッシャーのない試合練習は単なる遊び乃至運動のつもりならよいけれど強くなるためには殆ど無駄なことです。

B頭脳について
 テニスで勝つ為の基本は相手のいない所へボールを運ぶという簡単なことですから次の動きや心理状態を予測する能力が相手に優って居れば勝利はこちらのものです。この基本を忘れてただ単に力まかせに人間をめがけてボールを打ってくる人をよく見かけますが無駄なことであると同時に下手をすると怪我の原因にもなります。

 動きを予測する能力は、平常の練習ゲームの際、種々の場合に人がどのように反応するかを注意深く観察し、それらを確実に頭脳にインプットして行くことで高めることができます。特に負けゲームをいやがらずに数多くこなし、その時に自分より上手な相手の動き、試合運び、くせなどの情報を頭にたたきこんで行くのです。

 折角インプットした多くの情報を試合中瞬時に出せるようにするには実際の練習に加え眠りながらでもできるイメージ練習を反復することが非常に大切です。勝って当然の相手から得た勝利には何の感激もありませんが、過去のデータを最大限に利用し相手の動きを確実に読んで、こちらより上位と思われる相手に勝利したときの味はまた格別です。

 走る、飛ぶ、投げる、泳ぐなどの体力測定的な純粋スポーツで40代から始めて若い人たちに勝つことはまず不可能です。テニスではそれがある程度可能なのはまさにこのAとBの要素があるからです。テニスではそれほどハードな練習は必要ありません。本業をこなしながらでも充分に勝つテニスを楽しむことができます。勝利が体力だけに依存しないテニスこそ高年者にふさわしいスポーツと言えるでしょう。

               

 この10月16日から18日までの間、仙台で恒例の全日本医師テニス大会が開催されます。毎年300人を越すテニス愛好医と家族たちが集まって日頃の腕を競いあい、親交を暖めます。また世界医師テニス大会も毎年世界各地の廻り持ちで開催されます。残念ながら芝蘭会員の参加はどちらかというと低調です。日常的に適度の運動をしている者はしない者にくらべ成人病にかかる率が低く、10歳位若く居られるというのが定説です。皆さん、卒業してからもテニスの楽しさを忘れずこれを一生の友とされ、いつの日かこれらの大会でお会いできる日を楽しみにして居ります。

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