地球温暖化やワクチンについての愚考
伏見医報 2020年8月号 栗原 眞純
台風一過、久し振りに秋の青空の下、暑さも和らぎ爽やかな風を楽しんでいます。
気象庁が警告していた80m/secの風こそ吹かなかったもののスーパー台風が各地に大きな傷跡を残して通り過ぎて行きました。
台風は太平洋海水温の上昇に連れて、強く大きく発達します。地球温暖化とともに、海水温も上昇しつつあるので、今後もどでかいスーパー台風が続けて日本列島に上陸するかも知れません。地球温暖化がもたらす災害は台風の他にも、熱波、干ばつ、洪水、山火事などがあり、それらによる損失は世界で年間25兆円に達すると言われます。
地球温暖化は社会の近代化に連れて加速しています。放置すると人が住めなくなるので遅まきながらパリ協定が結ばれました。
地球温暖化の大きな原因がCO2などの温室効果ガスだということで、とりあえず地球のバイ菌の如くにはびこり、更に増えつつある自動車から生ずるCO2を減らすことについてWEB情報の助けを借りながら現状を考えて見ました。
これまで日本車は低燃費、つまりCO2排出量の少ないHV(ハイブリッド車)で世界をリードして来ました。ところが数年前から走行中にCO2を全く出さないEV(電気自動車)にそのリード役が変わろうとしています。
そこに目をつけたのが中国です。猛烈な勢いでEV車製造に力を入れ始めました。遠からず車はEVの時代になると読んだからです。
中国にはまだ生粋の自動車製造メーカーはないようです。ガソリンエンジン車に比べてはるかに構造が単純なEV製造こそ国の核心的利益に直結するとばかりに多くの企業に多額の補助金を出してEVメーカーを育てようとしました。しかし、EVの最重要部品である高性能電池の製造が難しくEV製造企業の殆どが撤退したそうです。
中国が電池製造でもたついている間にドイツなど欧州勢が日本を巻き込んで、CO2排出量は、単に走行中の排出量だけでなく、製造/流通過程を含む車の一生で考えるべき(LCA:Life Cycle Assessment)だと言い出しました。EVは肝腎の電池製造過程で大量のCO2を排出するのです。
そこで改めて注目されたのが水素ガスを燃料として走行する車です。水素を燃やして排出されるのは水だけです。
但し、2014年にトヨタが売り出した「MIRAI」は水素ガスを使うものの結局は「電池」を必要とする構造であったのでLCA的には排出CO2の抑制には至らず、それに気付いたトヨタは「MIRAI」製造を中止しました。日産も燃料電池車からは撤退しています。
「MIRAI」のような面倒なことをせずとも、現在タクシーなどで普通に使われているLPG(液化石油ガス)同様に水素ガスを直接、これまでのエンジンで燃やせばはるかに合理的、経済的に車を走らせることが出来る筈だと欧州勢(日本を含む)は考えました。今後は「LCA」方式が世界の潮流となってアメリカのEV、テスラとの市場獲得競争になって行くかも知れません。
マツダはロータリーエンジン車を水素ガスで走らせることも考えました。トヨタもLCAを視野に入れたからこそ「MIRAI」製造を打ち切ったのです。ベンツは2039年から全乗用車をCN車にする計画だそうです。(CNとは、CO2の排出と吸収を同じにするの意:カーボンニュートラル)VW BMWその他の欧州車メーカーもLCAを視野に入れています。
ここで大切なのは、水を分解して水素ガスを得る際に必要なエネルギーをどうするかです。CO2を排出する化石燃料を使うと折角液化水素ガス自動車を使う意味がありません。
そこで有望なのが2018年から「福島を水素社会の先駆けの地に」するために日本で始まった、再生可能エネルギー産出から水素ガス製造までの一大拠点作りの構想です。これが成功すれば日本各地にこのような拠点を作れば良いのです。後述するように拠点を海外に置くことも可能です。
福島で、無限の自然エネルギーを含む再生可能エネルギーや見渡せば世界にいくらでもある使われないエネルギー源、深夜電力のような余剰エネルギーなどを使って水を電気分解すれば非常に低コストで水素が得られるのです。
必須になる水素ガスステーションは現在ある通常のガソリンスタンドを水素ガスが扱えるものにして行けばよいでしょう。
他にも将来に向けて動き始めた有望な計画があります。遠く離れたオーストラリアが有する莫大な量の褐炭(水素を多く含む)から水素を取り出し液化するプラントを作って、水素ガス運搬タンカー(8,000トン級の試作専用船がこの秋川崎重工で完成予定)で日本へ運ぶ計画です。水素ガスと共に生成されるCO2は既に採掘を終えた海底深くのガス田に戻します。
本当はこのオーストラリア産の液化水素で走る交通システムを東京オリンピックで大々的に宣伝して世界を驚かせる計画だったのかも知れません。コロナ禍による計画遅れでその様子を多分見ることの出来ない安倍総理大臣、残念なことでした。7年余の日本牽引役、長い間お疲れさまでした。
アストラゼネカ発の新コロワクチンが治験中に深刻な副反応が出て治験が一時中断されました。このこと自体は英/米/日などの治験では、「ワクチンを投与した治験参加者が一人でも病気になると、因果関係があるかどうかが分かるまで、治験を中断させる」という決まりがあるので珍しいことではないようです。中国やロシアにそのようなシステムがあるかどうかは分かりません。
世界がワクチン完成を待ち望んでいる時に水をさすようで心苦しいのですが、新コロウイルスのような変異し易いRNAウイルスを撃退出来る確実に有効で安全なワクチンは残念ながらそう簡単には出来ないと思います。
発売に至る前段階での「有効性」と「安全性」の確立が非常に難しいからです。何をもって有効と判断するのでしょうか。
ワクチン接種後「3ヶ月間」新コロに感染しなければ「有効」なのか、その期間が「半年」、「1年」、「3年以上」であれば有効とするのか?
もしも「3年以上」とするなら最低でも検証に3年かかります。その「3年以上」経ったときに何事も無ければ「有効」だったと言えるのか? 3年間の治験中に新コロウイルスを接種して感染するかどうかまで検証するのか、そのような実験が許される筈も無く動物実験になります。すると更に開発に要する時間は5年ではきかなくなるでしょう。5年もすれば新コロも変異して旧コロになってしまいまた新たなワクチン開発が必要になるかも知れません。
このように一本鎖のRNAウイルスには「変異」し易いというこの上なく厄介な性質があります。武漢発のウイルスも既に何度も変異をくり返しその性質もゲノム構造も変わって来ています。これを克服して確かなワクチンを作るには気の遠くなるような基礎研究が必要です。
今年も10月から接種が始まるインフルワクチンについてさえ実感できるほどの「有効性」はなかなか見えて来ないのが実状です。
さらに、「安全性」についてですが、ワクチンは乳児や幼児を含む多数の健康人にも接種することになるので、通常の薬剤(死に至る難病などでは副反応で1人死亡しても100人助かれば許されることもある)よりずっと厳しい安全性が求められます。数万人に一人でも副反応による死者や重症者が出てはなりません。この「安全性」の確立には前述した「有効性」の検証よりさらに長期間が必要です。
とりあえずは効果の有無もよく分からない人工的なワクチン免疫よりも神が与えてくれて何千年もの間、幾多のパンデミックを乗り越えて来た私たち自身が持つ自然免疫の力に期待しましょう。
儲けと国家戦略のために作られた***製の即席ワクチンは有効性と安全性の検証が不十分です。使う気にはなれません。
新コロに強い日本人の血液から世界を救うワクチンが作れないものか、アンジェスさん挑戦されませんか?
2020/9/18記
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