明るい話題を求めて
伏見医報 2020年1月号  栗原 眞純


 新年になり3週間余、医報用に何か明るいネタがないかと昨年末からずっと考えていました。元旦以来穏やかで春のような日々が続いています。しかしこの暖冬もオーストラリアの森林火災やフィリピン、タール山噴火などと同様に大規模気候変動現象の一つに過ぎないかもと考えるとあまり喜ぶ気にもなれません。

 ひと月ほど前、運転免許証更新のために自宅近くの教習所に行きました。私ども後期高齢者は認知機能検査と実技試験の2度行きます。

 待合ロビーのテレビに交通事故のニュースが流れていました。又々ブレーキとアクセルの踏み間違いです。「二輪車や初期のオート三輪のようにブレーキは右足、アクセルは右手で操作する四輪自動車を作れば良いのに」などと考えましたが、大手メーカーがそのような車を作らない訳はすぐに分かりました。間もなく本格的な自動運転時代がやって来るからです。従来型のブレーキやアクセルは必要なくなります。

 車に乗って行き先を告げるだけで目的地まで行けるようになるとしたら、実技試験も要らなくなって運転免許試験も様変わりすることでしょう。
 数年前から、運転中に「やばいっ」と思う経験をしたら、その時が免許証返納の時期だと考えていましたが、この分では免許証返納の前に我が家にも自動運転車が無人自走でやって来ることになるのかも知れません。

自動運転と言えば、年初のイラン要人殺害事件も、昨年9月のサウジアラビア石油施設の攻撃もドローンつまり自動運転飛翔体によるものだったようです。しばらくの間、暗い話になりそうですがお許し下さい。

 イランの場合は米国製で1,000万ドル以上もする、軍事通信衛星を利用して遠く離れた米軍基地にいるパイロットが相手を見ながら遠隔/自動操縦の出来る大型ドローンが、一方サウジではイラン製1機200ドル程度のわずか20機ほどの小型無人自爆型ドローンが使われました。燃料だらけの石油施設攻撃にはそれで充分でした。
 ドローン兵器の最大の特徴は味方の人間が危険にさらされることなく目標を破壊出来ることです。小型ドローンによる大国間の代理戦争の手段としても増えて来るかも知れません。

 中国を始め世界各国ではお金をかけずに抜群の費用対効果が得られる兵器としてのドローン開発が急激に進んで来ました。 https://gendai.ismedia.jp/articles/-/63514


 これからのドローン兵器は、大型ドローンに積まれて遠隔操縦で目的地まで行き、そこで切り離された小型AI自律式スマートドローンが目的を果たすという仕組みになりそうです。

 小型軽量化とAI搭載による自律化がすすむと、攻撃目標は、大規模な軍事基地や石油施設だけでなく、顔認識、個人認識を応用し、かつ超低空、超低速飛行が可能となり、迷路のような建造物内部までも容易に侵入出来、特定の個人を倒すことが出来るようになります。低コスト化が進むと、貧者も使える最強兵器となります。それに気付いた身に覚えのある各国要人達は恐れおののくことになるかもしれません。

 1947年に7分前から始まった「終末時計」の針は今年に入って20秒進み過去最短の100秒前となりました。
 これまでで針が一番遅れたのは1990〜91年ソ連→ロシア、冷戦終結時の17分前でした。その後は2010年にオバマ大統領の核廃絶運動が進みかけた時に1分遅れただけで、年々進んでいます。トランプ大統領になってからは気候変動のせいもあり、2分以上進んでいます。0秒になる前に果たして救世主が表れるでしょうか。

 1月17日にやっと出て来た明るいニュースを一つ、地球の歴史は古生代、中生代、新生代などと呼ばれ、これらは更に細かく年代別に名前が付いています。よく知られているジュラ紀は中生代の1時期に当たります。新生代の中で、まだ名前の決まっていなかった、77万年前から13万年前までの時代は丁度地球の北極と南極の位置が入れ替わった(地磁気の逆転)時期なのだそうですが、このことを、日本の岡田誠教授等のチームが、千葉県市原市の地層研究によって証明し、2017年から提案していたチバニアン(千葉時代)という名称が国際地質科学連合によって認定されました。

     

 チバニアンは、人類「ホモ・サピエンス」が出現した時代でもあるそうです。
 養老川沿いの天然記念物にもなっていたこの地層にゴールデンスパイク(金鋲)が打ち込まれ、日本初の「国際標準地」となって地質研究のメッカとなります。
 日本の地質学のレベルの高さを改めて知りました。今後は世界中の教科書や研究論文などにもこの名前が使われます。研究者にとってはこの上ない喜びに違いありません。

 2020年1月26日現在、最大のニュースは武漢発の新型コロナウイルス肺炎です。この種のウイルスは感染を繰り返しながら変異して行きます。2008年頃に中国南部・東南アジアなどを襲ったH5N1ウイルスのような強毒型(致死率60%以上)、更には人−人感染型へと変異しないことを祈るばかりです。ついに明るい話題では終われませんでした。
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